導入前の確認 / 公開 2026-07-13 / 更新 2026-08-31 / 約8分

個人情報を使わずに始める、業務のAI・自動化

AIで残業や転記を減らしたい。でも顧客の名簿や取引先の情報を入れて大丈夫なのか分からず、そこで止まっている。最初の一歩は、公開ずみの文書、項目名だけの帳票、個人が分からない件数、架空のダミーデータでも試せます。大事なのは『個人情報を使わない』で終わらせず、何を使い、どこへ入れて、誰が確認するかまで決めることです。

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最初に試す範囲を公開情報・空の帳票・件数・ダミーデータに限り、顧客や従業員の個人情報、取引先の契約、パスワードは初回の対象外に置く図
最初に触れる範囲を、個人情報を含まない情報にしぼる考え方
この記事の目次
  1. 01個人情報を使わなくても、できることは意外と多い
  2. 02まず「入れないと決めるもの」をはっきりさせる
  3. 03名前を消しても「匿名」にはならない
  4. 04個人情報を使わずに、最初にできること
  5. 05本番のデータを入れる前に決める7つのこと
  6. 06道具を選ぶ前に、仕事のほうを分ける
  7. 07人の確認を、最後の一回だけにしない
  8. 08よくある質問
  9. 09相談のときは、情報そのものを送らなくていい

個人情報を使わなくても、できることは意外と多い

先に結論を書きます。AIや自動化を試すのに、いきなり顧客名簿や取引先の情報を使う必要はありません。次のようなことは、個人が特定できる情報に触れずに確かめられます。

  • 公開ずみの規程や案内文をもとに、問い合わせへの返信文の下書きを作る
  • 「項目名だけ」の空のフォームで、入力の順番や必須項目を先に決める
  • 個人が分からない件数や合計時間から、その作業にどれくらい時間がかかっているかを見える化する
  • 架空のダミーデータで、集計表や通知が思ったとおりに出るかを試す

これで「使えそうか」「どこでつまずくか」の見当がつきます。実際のデータを入れるかどうかは、その次に落ち着いて決めればいい話です。

Eighgent の代表は、システムが止まると患者さんに直接影響が出るリハビリテーション病院で、約10年ほど院内のIT担当をしていました。そこで身についた「止めない・元に戻せる・別の人に引き継げる」という進め方を、業種を問わず使っています。医療機関で患者情報や電子カルテがからむ場合は、法令のかかわり方が変わるので範囲の決め方も別になります。ここでは一般の業務を前提にします。

まず「入れないと決めるもの」をはっきりさせる

「機密情報は入れないでね」とだけ伝えても、人によって思い浮かべるものが違います。何が機密で何がそうでないかは、口頭の共通認識だと必ずずれます。おすすめは、扱う情報をいくつかに分けて、実物ではなく「項目名」で先に確認することです。

分け方最初の扱い
公開情報ホームページに載っている規程、料金表、採用案内使ってよい。ただし古い版で案内しないよう更新の担当を決める
業務情報空の帳票、作業手順、項目の定義、月間の件数使いやすい。担当者名や取引条件が混ざっていないか見る
従業員・取引先の情報氏名、勤務、評価、給与、連絡先、契約、口座これも個人情報になり得る。目的と閲覧範囲を決めるまで入れない
顧客・利用者の情報個人を特定できる申込内容、相談履歴、購入履歴初回は対象外。必要になったら範囲を決めて別に検討する
認証・接続の情報ID、パスワード、APIキー、接続用の設定試作でも本番のものを貼らない

「使いやすい」は「無条件で入れてよい」という意味ではありません。公開資料でも版が古ければ誤った案内につながりますし、空の帳票からでも社内の事情が読み取れることがあります。目的に必要な最小限にしぼります。

名前を消しても「匿名」にはならない

氏名を消しても、部署、役職、日付、めずらしい出来事を組み合わせれば個人が推測できることがあります。「匿名加工情報」「仮名加工情報」には法令上の決まった定義もあり、個人情報保護委員会の仮名加工情報・匿名加工情報編を確認しないまま、単に名前を置き換えただけのものを「匿名加工した」と呼ぶのは避けたほうがよいです。

「名前を消せば匿名」ではない

氏名を消しても、部署・役職・日付などの組み合わせで個人が分かることがあります。単純な置き換えと、法令上の匿名加工・仮名加工は別ものです。

試すときは、目的に合わせて次を使い分けます。

やり方向いている確認注意
空データ項目名だけの表画面、入力順、必須項目実際の例外は見えない
ダミー架空の氏名・金額集計、通知、帳票づくり本物と混ぜない
列を消すいらない列を外す必要最小限の確認残った列から特定できないか見る
置き換え氏名を「担当A」に変える処理の流れの確認法的な匿名加工とは違う
集計値月間件数、合計時間手間や効果の試算少人数の区分は推測に注意

どの加工なら安全かは、データと使いみちで変わります。判断がつかないときは、実データを使わず、確かめる範囲を狭くします。

個人情報を使わずに、最初にできること

例を一つ、前と後で並べます。よくある「問い合わせメールの一次対応」です。

見るところいまのやり方個人情報を使わずに試すと
元にする情報過去のメール本文(個人情報を含む)公開ずみのFAQと案内文、社内手順書
AIにさせること質問の種類分けと、定型返信の下書き
人がすること毎回ゼロから返信を書く下書きに固有の事情を足して送る
個人情報の扱い本文ごとAIに渡してしまいがち渡さない。宛名や個別内容は人が最後に入れる

ほかにも、こんな始め方があります。

  • 毎月の集計表づくりを、架空データで組み立てておく。関数や表の形が固まってから、本物の数字を自分たちで差し込む。
  • 複数の部署から届くExcelをまとめる作業を、項目名だけのサンプルで通してみる。どの列がそろわないかが先に分かる。

どれも「動かし方」を先に確かめて、実データは最後に人が入れる形です。

本番のデータを入れる前に決める7つのこと

試作が動きそうだと思ったら、データを入れる前に、情報の流れを一枚にまとめます。技術的につながるかより、誰が何を許可して、どこで止められるかを先に決めます。

  1. 目的。どの作業を、何をもって「良くなった」と言うか。
  2. 入力。どの情報を使い、何は使わないか。
  3. 処理。どのサービス、どの端末で、何をするか。
  4. 保存。どこに、何日、どんな形で残るか。
  5. 権限。誰が見られて、誰が直せて、誰が消せるか。
  6. 確認。AIや自動処理の結果を、誰が最終的に確定するか。
  7. 戻し方。問題が起きたとき、止めて元の手順に戻す方法。

個人情報保護委員会の生成AIサービスの利用に関する注意喚起(令和5年6月2日)は、事業者が個人情報を含む指示文をAIに入れる場合、その利用目的の達成に必要な範囲かを十分に確認するよう求めています。範囲を超えた使われ方をすると、法律に触れる可能性があるという内容です。7つのうち「入力」と「処理」は、ここに直結します。

道具を選ぶ前に、仕事のほうを分ける

「文章があるからAI」「転記があるから自動化」と先に道具を決めると、情報の扱いが後回しになります。先に作業を分けて、いちばん単純な方法から見ていきます。

  • 入力のルールをそろえるだけで済まないか
  • いま使っている表計算やSaaSの設定で足りないか
  • 条件がはっきりしているなら、決まった手順の自動化で十分か
  • 下書きや種類分けだけAIに任せるか
  • 既存のシステムの改修を、詳しい会社に頼むべきか

AIを使うと決めたら、サービス名だけで選ばず、契約条件、入れたデータが学習に使われるか、保存と削除、管理者向けの機能、提供している国、外部への再委託などを確認します。個人情報保護委員会のガイドライン・法令一覧から、自社に関係する原文をたどれます。経営者や従業員向けの入門的な整理としては、東京商工会議所「中小企業のための『生成AI』活用入門ガイド」が無料で読めます。

人の確認を、最後の一回だけにしない

「最後は人が見ます」と書くだけでは足りません。何を見て、どの場合に差し戻して、誰が承認するかを決めます。確認は3か所に分けると軽くなります。

場所見ること
入力の前対象外の情報(個人情報など)が混ざっていないか
処理の後抜け、取り違え、計算のずれがないか
確定の前業務上の例外、権限、最終判断を満たしているか

全部を二重チェックすると、せっかく減らした手間が戻ります。機械が「一致した」と判断したものはそのまま通し、人は不一致と例外だけを見る。そうすると、確認の責任は残したまま負担を減らせます。AIを入れても仕事が楽にならない場合の見直し方はAIを導入しても仕事が楽にならない理由でも整理しています。

よくある質問

QUESTION 01

名前を消せば、外部のAIに入れても大丈夫ですか

一律には言えません。ほかの項目との組み合わせで個人が分からないか、利用目的、契約、保存、学習への利用、海外での取り扱いなどを確認します。判断がつかない段階では入れません。

QUESTION 02

従業員の情報なら、顧客情報より自由に使えますか

いいえ。氏名、勤務、評価、給与、連絡先なども個人情報になり得ます。目的と閲覧できる人を決めて、必要最小限にします。

QUESTION 03

自分のパソコンの中で動かせば安全ですか

外に送るデータは減らせるかもしれませんが、端末の管理、権限、記録、更新、バックアップ、持ち出しといった別の管理が必要になります。置き場所だけで安全は決まりません。

QUESTION 04

最初はどの仕事から試すのがいいですか

空の帳票やダミーデータで流れを再現でき、結果を人が確認でき、問題が起きても元の手順に戻せる仕事が向いています。月次の集計、未提出の確認、公開ずみの規程の検索などから、条件を見ていきます。

相談のときは、情報そのものを送らなくていい

最初の相談で実データを送る必要はありません。「どの部署が」「何を受け取り」「どこへ写して」「誰が確認するか」を文章で説明できれば、次に確かめることを整理できます。

相談から業務の確認、改善までの進め方では、契約の前、確認中、試すときにそれぞれ何を決めて何を用意するかを示しています。個人情報を使わない範囲から始めたい場合は、その前提を最初に教えてください。

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