導入前の確認 / 公開 2026-07-13 / 更新 2026-07-16 / 約13分
残業・属人化・転記ミスを減らす、小さな業務診断
いきなりAIツールを選ぶのではなく、まず一部署の一業務を見て、何に時間がかかり、どこで待ち、誰の判断に依存しているかを整理します。業務診断は、導入を決める場ではなく、改善するかどうかを院内で判断するための材料を作る工程です。

業務診断では、AI導入を先に決めない
月末になると、各部署から届いたExcelを一つにまとめる。未提出の部署へ連絡し、数字が合わなければ元の表へ戻る。担当者が休むと、列の意味や確認先が分からない——管理側から見えるのは「大変そうだ」という事実までで、月に何時間かかり、どこから直すべきかまでは見えていないことがあります。
業務診断で行うのは、ツールのデモではありません。受け取る、入力する、照合する、確認する、伝える、保管するという現在の流れを図にし、件数、時間、差し戻し、待ち時間、情報の種類を整理します。その結果を見て、手順だけ直すのか、既存機能を使うのか、小さく自動化するのか、今は何もしないのかを判断します。
IPAのDX推進指標も、経営者と関係者が現状や課題への認識を共有し、次の行動へつなげる自己診断の考え方を示しています。Eighgentの業務診断は同じ制度ではありませんが、「先に認識をそろえる」という点は共通します。
最初に選ぶのは、負担が大きい業務とは限らない
一番時間がかかる仕事が、最初の改善対象に向くとは限りません。患者情報を扱う、例外判断が多い、基幹システムと密接につながる、失敗時の影響が大きい業務は、効果が大きくても初回には重いからです。
候補を選ぶときは、次の4軸を並べます。
- 負担: 回数、一回の時間、差し戻し、待ち時間が多いか
- 再現性: 手順と入力形式がある程度決まっているか
- 安全性: 影響範囲を一部署・一業務に限定できるか
- 測定性: 改善前後を同じ条件で比べられるか
たとえば、月次集計や未提出確認は、患者情報を除いた表で試しやすく、作業時間も測りやすい候補です。一方、診療判断、電子カルテ本体、レセプト確定のような領域は、別の専門性、責任分担、ベンダー調整が必要です。
診断で見る数字は、費用だけではない
「何時間減るか」は大切ですが、それだけで判断すると現場の負担を見落とします。診断では、少なくとも次の数字を確認します。
| 見る項目 | 確認すること | 改善後の見方 |
|---|---|---|
| 件数 | 月・週に何件あるか | 件数増加にも耐えられるか |
| 作業時間 | 一件と月全体で何分か | 同じ条件で短くなったか |
| 差し戻し | 何件、どの理由で戻るか | 不備を前工程で減らせたか |
| 待ち時間 | 誰の返答・承認を待つか | 滞留場所が変わっていないか |
| 確認回数 | 同じ情報を何人が見るか | 必要な確認は残っているか |
| 属人化 | 休むと止まる判断は何か | 手順と例外が引き継げるか |
数字が取れない場合は、最初の一週間だけ記録表をつけます。「忙しい気がする」を否定するためではなく、改善後に比べる基準を作るためです。一般的な削減率を当てはめるより、自院の実測値を少量でも取る方が判断に使えます。
業務診断は6段階で進める
診断は、ヒアリングだけで完結しません。担当者の説明と実際の帳票・画面・例外を照らし合わせ、院内で確認できる形へ変えます。
1. 対象と責任者を決める
総務、人事、経理、委員会などから一業務を選び、現場担当者と院内の判断者を決めます。担当者だけで始めると、権限や優先順位で止まりやすくなります。
2. 通常処理と例外を図にする
誰が何を受け取り、どこへ入力し、誰が確認するかを並べます。通常の流れだけでなく、添付不足、数字の不一致、締切超過、担当者不在も書きます。例外を省くと、試作品は動いても現場では使えません。
3. 件数と時間を測る
対象期間と測り方をそろえます。画面を開く時間、転記、確認、待ち、差し戻し対応を分けると、自動化より手順変更が効く場所も見えます。
4. 情報と安全条件を分ける
患者情報を使わない業務でも、職員氏名、給与、契約先、口座、メールアドレスを扱うことがあります。個人情報保護委員会と厚生労働省の医療・介護ガイダンスを踏まえ、情報の種類、利用目的、保存場所、閲覧者を確認します。
5. 選択肢を比較する
AIありきにはしません。入力書式の統一、Excel関数、既存SaaSの設定変更、ルールベース自動化、AIによる下書き、個別開発を並べます。効果、費用、運用負荷、安全性、元へ戻せるかで比較します。
6. 続行・修正・見送りを報告する
診断結果は「導入してください」で終わらせません。小さく試す候補、先に手順を直す候補、現時点では触らない候補を分けます。改善しない判断にも根拠が残れば、診断は無駄ではありません。
病院側と外部支援者の役割を先に分ける
外部支援者が業務を理解しても、院内の承認や例外判断は代行できません。反対に、病院側だけで製品比較を始めると、現状整理が後回しになりやすくなります。
| 項目 | 病院側 | Eighgent |
|---|---|---|
| 対象選定 | 優先部署、責任者、制約を決める | 候補の診断しやすさを整理する |
| 現状確認 | 実際の作業、帳票、例外を説明する | 業務フローと論点を可視化する |
| 情報管理 | 院内規程、権限、利用目的を確認する | 取扱情報と対象外を整理する |
| 改善判断 | 予算、責任、続行可否を決める | 選択肢、効果仮説、リスクを示す |
| 最終承認 | 院内の権限者が行う | 選択肢とリスクを整理し、説明を支援する |
患者情報や医療情報システムを対象に含める場合は、最新の医療情報システムの安全管理に関するガイドラインと院内規程、既存ベンダーとの責任分担を別途確認します。最初からその領域へ入らないことは、準備不足ではなく、影響を限定して進め方を確かめる選択です。
診断後に受け取る成果物
口頭の助言だけでは、院内へ持ち帰って説明できません。診断結果は、次の判断へ使える形で残します。
- 現状業務フロー: 通常処理、例外、承認、保管まで
- 負担の試算: 件数、時間、差し戻し、待ちの前提
- 情報区分表: 扱う情報、扱わない情報、閲覧者、保存先
- 改善候補一覧: 手順変更、既存機能、自動化、AI、個別開発の比較
- 次の選択肢: 見送り、小規模テスト、Pilot、別事業者への相談
デジタル庁の標準ガイドライン群は政府向けの資料ですが、サービスと業務改革、情報システム整備を手順と役割に分けて考える参考になります。病院向けにそのまま適用するのではなく、院内の規程と規模に合わせて必要な部分だけ使います。
院内説明では「AI」より、対象・効果・責任を示す
院長や経営会議へ説明するとき、最初に製品名を出す必要はありません。次の5点が一枚で読める方が判断しやすくなります。
- 何の業務を対象にするか
- 現在どれだけ時間や差し戻しがあるか
- 何を変え、何を変えないか
- 誰が最終確認し、問題時にどう戻すか
- いくらかかり、何を測って続行を決めるか
「AIを導入する企画」ではなく、「月次集計の転記と確認を減らす企画」のように、仕事の名前で説明します。技術は手段として後から選べます。
よくある質問
相談前に要件書や業務フローは必要ですか
必要ありません。普段使っているExcel、紙、メール、確認手順を分かる範囲で説明できれば始められます。診断の中で現状フローを作ります。
診断したらシステム導入まで依頼する必要がありますか
ありません。診断結果を見て、手順変更だけ行う、既存ベンダーへ相談する、時期を置くという判断もできます。診断と改善実装は分けて考えます。
患者情報を見せないと診断できませんか
最初は、項目名を置き換えたサンプル、個人を識別できない件数、空の帳票でも確認できます。ただし、実運用へ進む場合は取扱情報と安全管理を改めて確認します。
どの部署から始めるとよいですか
回数が多く、手順が比較的決まっており、影響を一部署へ限定できる業務が候補です。部署名より、実際の一業務で選びます。
最初の相談で教えてほしいこと
完成した資料は不要です。「毎月何がつらいか」「誰が休むと止まるか」「どの確認が怖いか」を一つ教えてください。30分の相談では、診断に向く業務か、院内で先に確認することがあるかを整理します。
無料相談から業務診断、改善までの進め方も、契約前に確認できます。相談したからといって、診断や導入を前提にはしません。