導入前の確認 / 公開 2026-07-13 / 更新 2026-08-31 / 約11分
残業・属人化・転記ミスを減らす、小さな業務診断
いきなりAIツールを選ぶのではなく、まず一部署の一業務を見て、何に時間がかかり、どこで待ち、誰の判断に依存しているかを整理します。業務診断は、導入を決める場ではなく、改善するかどうかを社内で判断するための材料を作る工程です。
この記事の目次
業務診断では、AI導入を先に決めない
月末になると、各部署から届いたExcelを一つにまとめる。出していない部署へ連絡し、数字が合わなければ元の表へ戻る。担当者が休むと、列の意味や確認先が分からない。管理側から見えるのは「大変そうだ」という事実までで、月に何時間かかり、どこから直すべきかまでは見えていないことがあります。
業務診断で行うのは、ツールのデモではありません。受け取る、入力する、照合する、確認する、伝える、保管するという今の流れを図にし、件数、時間、差し戻し、待ち時間、情報の種類を整理します。その結果を見て、手順だけ直すのか、既存機能を使うのか、小さく自動化するのか、今は何もしないのかを判断します。
IPAのDX推進指標も、経営者と関係者が現状や課題への認識を共有し、次の行動へつなげる自己診断の考え方を示しています。Eighgentの業務診断は同じ制度ではありませんが、「先に認識をそろえる」という点は共通します。
最初に選ぶのは、負担が大きい業務とは限らない
一番時間がかかる仕事が、最初の改善対象に向くとは限りません。個人情報を多く扱う、例外の判断が多い、基幹システムと密接につながる、失敗時の影響が大きい業務は、効果が大きくても初回には重いからです。
候補を選ぶときは、次の4つを並べます。
| 軸 | 見ること |
|---|---|
| 負担 | 回数、1回の時間、差し戻し、待ち時間が多いか |
| 再現性 | 手順と入力の形式がある程度決まっているか |
| 安全性 | 影響の範囲を一部署・一業務に限定できるか |
| 測定性 | 改善の前後を同じ条件で比べられるか |
たとえば、月次の集計や未提出の確認は、個人情報を除いた表で試しやすく、作業時間も測りやすい候補です。一方、契約や与信の判断、基幹システム本体にかかわる処理は、別の専門性、責任分担、業者との調整が必要です。
診断で見る数字は、費用だけではない
「何時間減るか」は大切ですが、それだけで判断すると現場の負担を見落とします。診断では、少なくとも次の数字を確認します。
| 見る項目 | 確認すること | 改善後の見方 |
|---|---|---|
| 件数 | 月・週に何件あるか | 件数が増えても耐えられるか |
| 作業時間 | 1件と月全体で何分か | 同じ条件で短くなったか |
| 差し戻し | 何件、どの理由で戻るか | 不備を前の工程で減らせたか |
| 待ち時間 | 誰の返答・承認を待つか | 滞留する場所が変わっていないか |
| 確認回数 | 同じ情報を何人が見るか | 必要な確認は残っているか |
| 属人化 | 休むと止まる判断は何か | 手順と例外を引き継げるか |
数字が取れない場合は、最初の一週間だけ記録表をつけます。「忙しい気がする」を否定するためではなく、改善後に比べる基準を作るためです。一般的な削減率を当てはめるより、自社の実測値を少量でも取るほうが判断に使えます。
業務診断は6段階で進める
診断は、ヒアリングだけで完結しません。担当者の説明と、実際の帳票・画面・例外を照らし合わせ、社内で確認できる形へ変えます。
1. 対象と責任者を決める
総務、人事、経理、庶務などから一業務を選び、現場担当者と社内の決裁者を決めます。担当者だけで始めると、権限や優先順位で止まりやすくなります。
2. 通常処理と例外を図にする
誰が何を受け取り、どこへ入力し、誰が確認するかを並べます。通常の流れだけでなく、添付不足、数字の不一致、締切超過、担当者不在も書きます。例外を省くと、試作品は動いても現場では使えません。
通常の流れだけでなく、添付不足・数字の不一致・締切超過・担当者不在などの例外まで図にすることが、使える試作品につながります。
3. 件数と時間を測る
対象の期間と測り方をそろえます。画面を開く時間、転記、確認、待ち、差し戻し対応を分けると、自動化より手順の変更が効く場所も見えます。
4. 情報と安全条件を分ける
個人情報を使わない業務でも、従業員の氏名、給与、取引先、口座、メールアドレスを扱うことがあります。個人情報保護委員会のガイドライン・法令一覧を踏まえ、情報の種類、利用目的、保存場所、閲覧できる人を確認します。
5. 選択肢を比較する
AIありきにはしません。入力書式の統一、Excel関数、既存SaaSの設定変更、決まった手順の自動化、AIによる下書き、個別開発を並べます。効果、費用、運用の負荷、安全性、元へ戻せるかで比較します。
6. 続行・修正・見送りを報告する
診断結果は「導入してください」で終わらせません。小さく試す候補、先に手順を直す候補、今は触らない候補を分けます。改善しない判断にも根拠が残れば、診断は無駄ではありません。
業務診断のゴールは「導入を決めること」ではなく、小さく試す・手順を直す・今は触らないを、根拠とともに切り分けることです。
依頼側と外部支援者の役割を先に分ける
外部の支援者が業務を理解しても、社内の承認や例外の判断は代行できません。反対に、社内だけで製品比較を始めると、現状整理が後回しになりやすくなります。
| 項目 | 依頼側 | Eighgent |
|---|---|---|
| 対象選定 | 優先する部署、責任者、制約を決める | 候補の診断しやすさを整理する |
| 現状確認 | 実際の作業、帳票、例外を説明する | 業務の流れと論点を可視化する |
| 情報管理 | 社内規程、権限、利用目的を確認する | 扱う情報と対象外を整理する |
| 改善判断 | 予算、責任、続けるかを決める | 選択肢、効果の仮説、リスクを示す |
| 最終承認 | 社内の権限者が行う | 選択肢とリスクを整理し、説明を支援する |
個人情報を多く含む業務や基幹システムを対象に含める場合は、社内規程、既存の業者との責任分担、関係する法令のガイドラインを別途確認します。最初からその領域へ入らないことは、準備不足ではなく、影響を限定して進め方を確かめる選択です。
診断後に受け取る成果物
口頭の助言だけでは、社内へ持ち帰って説明できません。診断結果は、次の判断へ使える形で残します。
- 現状業務フロー: 通常処理、例外、承認、保管まで
- 負担の試算: 件数、時間、差し戻し、待ちの前提
- 情報区分表: 扱う情報、扱わない情報、閲覧者、保存先
- 改善候補一覧: 手順変更、既存機能、自動化、AI、個別開発の比較
- 次の選択肢: 見送り、小規模テスト、試験導入、別の事業者への相談
デジタル庁の標準ガイドライン群は政府向けの資料ですが、サービスと業務改革、情報システム整備を手順と役割に分けて考える参考になります。そのまま当てはめるのではなく、社内の規程と規模に合わせて必要な部分だけ使います。
社内の説明では「AI」より、対象・効果・責任を示す
経営者や役員へ説明するとき、最初に製品名を出す必要はありません。次の5点が一枚で読めるほうが判断しやすくなります。
- 何の業務を対象にするか
- 今どれだけ時間や差し戻しがあるか
- 何を変え、何を変えないか
- 誰が最終確認し、問題が起きたらどう戻すか
- いくらかかり、何を測って続けるかを決めるか
「AIを導入する企画」ではなく、「月次集計の転記と確認を減らす企画」のように、仕事の名前で説明します。技術は手段として後から選べます。IPAのデジタルガバナンス・コードの解説でも、指標を決めて成果を自分たちで評価する考え方が示されています。
よくある質問
相談前に要件書や業務フローは必要ですか
必要ありません。普段使っているExcel、紙、メール、確認の手順を分かる範囲で説明できれば始められます。診断のなかで現状フローを作ります。
診断したらシステム導入まで依頼する必要がありますか
ありません。診断結果を見て、手順の変更だけ行う、既存の業者へ相談する、時期を置く、という判断もできます。診断と改善の実装は分けて考えます。
個人情報を見せないと診断できませんか
最初は、項目名を置き換えたサンプル、個人を識別できない件数、空の帳票でも確認できます。ただし、実運用へ進む場合は、扱う情報と安全管理を改めて確認します。
どの業務から始めるとよいですか
回数が多く、手順が比較的決まっており、影響を一部署へ限定できる業務が候補です。部署名より、実際の一業務で選びます。
最初の相談で教えてほしいこと
完成した資料は不要です。「毎月何がつらいか」「誰が休むと止まるか」「どの確認が怖いか」を一つ教えてください。
代表は、止まると現場がすぐ困る医療機関のシステム担当を約10年務めてきました。その経験から、Eighgent は「止めない・戻せる・引き継げる」を最初に確認します。無料相談から業務診断、改善までの進め方も、契約前に読めます。相談したからといって、診断や導入を前提にはしません。