業務改善 / 公開 2026-08-28 / 更新 2026-08-30 / 約8分

Google Workspaceの管理を一人に任せてきた会社が、退職の前に確保すること

数年前に、詳しい人ひとりへGoogle Workspaceの管理者を任せた。その人が辞めることになって管理画面を開こうとしたら、入れるのはその人だけだった。パスワードの再発行も、退職者アカウントの停止も、頼める相手がいない。まず何を確保しておけばいいのかを、辞める前にできる順番で整理します。

Google Workspaceアカウント管理情シス引き継ぎ中小企業
管理者が一人だけの状態から、特権管理者を複数に増やし、請求とドメインの名義・退職者処理・手順書を会社側にそろえるまでを左右に並べた図
退職の前に、管理画面に入れる人を増やし、会社の名義と手順を自分たちの側にそろえます
この記事の目次
  1. 01辞めると決まったら、まず特権管理者をもう一つ作る
  2. 02「管理者が一人だけ」で何が起きるか
  3. 03退職前に確保する4つのこと
  4. 04退職まで時間がないときの優先順位
  5. 05外部に引き継ぎを頼むときに気をつけること
  6. 06一人に任せてきたGoogle Workspaceの引き継ぎについてよくある質問
  7. 07引き継ぎを一緒に整理したいとき

辞めると決まったら、まず特権管理者をもう一つ作る

先に、いちばん急ぐことだけ書きます。その担当者が在籍していて、まだ管理画面に入れるうちに、特権管理者(スーパー管理者)のアカウントをもう一つ作り、経営側の人に持たせてください。 これができていれば、退職後にログインできなくなる事態は避けられます。

Google も、特権管理者は複数用意することを公式にすすめています。1つのアカウントが使えなくなっても、別の管理者が停止や追加を続けられるようにするためです(管理者アカウントのセキュリティに関するおすすめの方法)。

この記事は、管理者がその担当者1人だけ、という状態からの引き継ぎを扱います。すでに他に管理者がいる会社や、担当者がもう辞めてしまって誰も入れない会社は事情が違います(入れない場合は最後のよくある質問に触れています)。管理画面のクリック手順ではなく、辞める前に何を決めておくか、という話です。

「管理者が一人だけ」で何が起きるか

その人しか管理画面に入れない状態のまま退職を迎えると、だいたい次の4つで詰まります。

  • 管理画面に誰もログインできない。 新しい社員のアカウントを作ることも、設定を変えることもできません。
  • 退職者自身のアカウントを止められない。 辞めた人のメールとファイルが、止める人がいないまま生き続けます。
  • パスワードの再発行を頼む相手がいない。 これまではその人が窓口でした。ほかの誰かがログインできなくなっても直せません。
  • 止めたつもりのアカウントに課金だけ続く。 ライセンスが割り当たったままなら、使っていなくても料金はかかります(離職した従業員のデータを保持するためのオプション)。

正直なところ、これは担当者個人の落ち度ではありません。予備を作らずに1人へ寄せた形が、そのまま続いてしまっただけです。直し方も、担当者を責めることではなく、管理画面に入れる人を増やすことです。

退職前に確保する4つのこと

引き継ぐものは、細かく挙げるときりがありません。優先度が高いのは次の4つです。

確保するもの誰が持つか確認のしかた
特権管理者の権限経営側の人と、実務の担当者の最低2名管理画面の管理者の役割に、退職者以外の名前があるか
請求先とドメインの所有会社(会社の口座・会社名義)支払い方法が個人カードでないか、ドメインの管理者が誰か
退職者アカウントの止め方会社として手順を決めておく停止・引き継ぎ・保持・削除の順番が書き出してあるか
手順書次の担当者がすぐ読める場所口頭でしか共有されていない作業がないか

以下、4つを順番に見ます。

特権管理者を複数にする

Google の公式ページには、次のことが書かれています(前掲の「おすすめの方法」)。

  • 特権管理者は2人以上にし、それぞれ別の人が管理する。
  • 特権管理者は、管理専用のアカウントと、ふだんの仕事用のアカウントを分ける。日常業務では特権管理者を使わない。
  • 管理者アカウントには、電話番号と再設定用メールを登録しておく。パスワードを忘れても本人が再発行できるようにするためです。

全部の権限を新しい人へ丸ごと渡すことに不安があるなら、必要な範囲だけのロールを割り当てる方法もあります。グループ管理者、ユーザー管理者、ヘルプデスク管理者など、あらかじめ用意された役割から選べます(事前構築の管理者ロール)。特権管理者は経営側と信頼できる1名に絞り、実務担当には必要なロールだけ渡す、という分け方もできます。

請求先とドメインの所有を会社の名義にする

小さい会社でありがちなのが、契約も支払いも担当者の個人名義・個人カードになっているパターンです。この状態でその人が辞めると、支払いが止まったり、請求の連絡が届かなくなったりします。

ドメインが切れると、会社のメールが丸ごと止まります。更新を担当者個人のカードと個人の記憶に頼っている場合は、ここを最優先で直してください。

退職者アカウントの止め方を決めておく

辞めた人のアカウントは、いきなり削除しないでください。順番があります。

  1. 停止する。 ログインをすぐ止められます。ただし停止しただけではライセンス料は止まりません。
  2. データを引き継ぐ。 ドライブのファイル、カレンダー、ドキュメントの持ち主を、削除処理の中で別の人へ移せます。
  3. 保持を決める。 しばらく残す必要があるなら、アーカイブユーザーという低コストの枠でデータを保持できます。使えるかどうかと料金はプランによって違うので、契約内容を確認してください(前掲の「保持するためのオプション」)。
  4. 削除する。 削除するとデータは元に戻せません。例外として、削除から20日以内なら特権管理者が復元できます(最近削除したユーザーを復元する組織からユーザーを削除する)。

グループ宛やエイリアス宛(`info@` など)に届いていたメールも確認しておきます。退職者個人のアドレスでしか受けていなかった取引先の連絡が、止めた瞬間に宙に浮くことがあります。

次の担当者が読める手順書を残す

口頭でしか引き継がれない作業が、いちばん危ういです。最低限、次を書き出しておきます。

  • 管理画面へのログイン方法と、特権管理者が誰か。
  • ログインできなくなったときの再発行の手順、2段階認証の復旧方法(2段階認証プロセスで保護されているアカウントを復元する)。
  • 契約しているベンダーや代理店の連絡先、更新期限。
  • 毎月見るもの(新しく作ったアカウント、退職者のアカウント、容量の残り)。

退職まで時間がないときの優先順位

余裕があれば全部やるに越したことはありませんが、あと数週間しかない、ということもあります。その場合は上から順に。

  1. 3か月前まで: 特権管理者を追加し、請求とドメインの名義を会社に移す。手順書の下書きを始める。
  2. 1か月前まで: 退職者アカウントの止め方を決め、グループ宛メールの受け先を整理する。新しい担当者に、実際に管理画面を触ってもらう。
  3. 最終週: 退職者のデータの移行先を決め、移行を実行する。特権管理者の再設定用の電話・メールが、退職者のものになっていないか確認する。
  4. 退職後30日以内: アカウントを停止のまま保持するか、削除するかを判断する。削除する場合も20日の復元期間があることを覚えておく。

時間がないときに最優先なのは、最初の2つ(特権管理者の追加と、請求・ドメインの確認)です。ここさえ押さえれば、あとは退職後でも落ち着いて進められます。

外部に引き継ぎを頼むときに気をつけること

自分たちだけでは難しい、と感じることもあると思います。外に頼む場合、契約の前に次を確かめておくと安全です。

  • 所有するアカウントは会社側に残す。 作業のために一時的に権限を渡すことはあっても、特権管理者や請求先の名義まで相手に移さない。
  • 元に戻せる状態で受け取る。 何をどう変えたかの記録と、変更前の状態が分かるものを一緒にもらう。
  • 責任の範囲を先に決める。 依頼した作業の範囲でのやり直しまで、というのが一般的な考え方です。会社全体のデータ保証まで負う契約にはなりにくい、と理解しておいてください。

わたしたちは病院の社内SEとして約10年、システムが止まると患者さんに直接影響が出る現場で、アカウントと権限、退職者の処理、元に戻す手順を設計してきました。自治体のシステム更改では、要件の整理から設計・構築・引き渡しまでを担当しています。Eighgent としては、この経験をもとに「担当者が辞めても回る形」を一緒に整理するところまでをお手伝いします。作業そのものの代行や、権限を預かる契約は、いまの体制では請け負っていません。

導入そのものを迷っている段階なら Google Workspaceは個人事業主・小さな会社に必要か を、入れたのに使われていないという話なら Google Workspaceを入れても変わらないとき、先に直すのは運用ルール にまとめています。

一人に任せてきたGoogle Workspaceの引き継ぎについてよくある質問

QUESTION 01

すでに退職して、誰も管理画面に入れません

Google に、組織アカウントの復旧手続きがあります。会社のドメインを持っていること、支払いの記録があることなど、その組織の持ち主だと示せる情報が必要になります。時間がかかることも、うまくいかないこともあるので、まだ担当者が在籍しているなら、辞める前に特権管理者を増やすのが確実です。

QUESTION 02

特権管理者は何人が適切ですか

小さい会社なら2〜3人が目安です。1人だと今回のように詰まり、多すぎると誰でも重要な設定を変えられて危うくなります。経営側の人と、実務の担当者、その予備、くらいで足ります。

QUESTION 03

退職者のGmailは、いつ消していいですか

すぐには消さないでください。まず停止して、必要なメールとファイルの持ち主を移してから判断します。取引先が退職者個人のアドレスに連絡してくることもあるので、しばらくは受信を確認できる状態で残し、落ち着いてから削除します。削除すると元に戻せません(20日以内なら復元できます)。

QUESTION 04

グループやエイリアス宛のメールはどうなりますか

`info@` のような共有アドレスに届いていたメールは、受け取るメンバーの設定しだいです。退職者だけがメンバーだった場合、その人を外すと誰も受け取れなくなります。退職前に、共有アドレスの受け取り先を複数にしておきます。

QUESTION 05

中途採用の情シスに、全部渡してしまっていいですか

いきなり特権管理者を全部渡すより、まず必要なロールだけを割り当てて、しばらく一緒に運用してから広げるほうが安全です。前任者が1人に寄せて属人化した形を、そのまま次の人で繰り返さないためです。

QUESTION 06

外部に頼むと、管理を握られませんか

握らせない形で頼めます。特権管理者と請求先の名義は会社に残したまま、作業に必要な範囲だけ一時的に権限を渡し、終わったら戻してもらう。契約の前に「所有アカウントは会社側」「変更前に戻せる記録を残す」を条件にしておけば、主導権は会社に残ります。

引き継ぎを一緒に整理したいとき

管理者権限、請求とドメインの名義、アカウントの棚卸し、退職者の処理。これを退職までにそろえるのは、ふだんの仕事の合間だと後回しになりがちです。

無料相談 で、いまの管理者が誰か、契約と支払いの名義、退職の予定を伺って、辞める前に確保することと、その順番を一緒に整理します。相談だけで終わっても費用はかかりません。認証情報や社外秘の資料は、初回にはお預かりしません。

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